令和6年調剤報酬改定では、地域支援体制加算などにかかりつけの実績が求められるようになりました。ですが、患者の薬局選択の理由の多くは立地依存で(患者のための薬局ビジョン実現のための実態調査報告)、2016年の新設から10年弱経過した今でも、かかりつけ薬剤師は浸透しているとは言えません。薬剤師として働く皆さんの中にも、立地依存で来局される患者にかかりつけのメリットを説明し、同意を取ることに頭を悩ましている方も多いのではないでしょうか?
今回はそんなかかりつけ薬剤師指導料について、患者が納得して同意をとるコツを紹介いたします。
なぜかかりつけ薬剤師の同意がとれないのか?
かかりつけ薬剤師制度が始まって約10年経ちますが、令和4年の社会医療診療行為別統計によると、かかりつけ薬剤師指導料の算定は全体の約2%と、まだまだ算定が進んでいません。なぜかかりつけの算定が進まないのでしょうか?
よく理由として聞かれるのは、「一人薬剤師でどの患者も私が指導を行っているから、指名料を取れない」「今までもかかりつけのような対応をしてきたのに、費用を取ると言って断られるのが怖い」といった理由です。
一人薬剤師だとかかりつけの同意は取れないのか?
かかりつけ薬剤師には同じ薬剤師が一人の患者を継続して担当するという側面もありますが、他医療機関で交付された薬剤の把握や開局時間外の対応なども求められています。一人薬剤師だからといってかかりつけの同意を取ってはいけないということはありません。
追加費用を説明して断られるのが怖い?
実際に3割負担と1割負担の差額を計算してみましょう。かかりつけ薬剤師指導料は76点。もしかかりつけを算定せずに服薬管理指導料の3ヶ月以内の再調剤を算定した場合は45点。計算すると、かかりつけを算定した時と算定しない時の差額は、1割負担で約30円、3割負担で約90円となります。時間外の対応や他医療機関で処方された薬剤、OTC、健康食品なども含めた服薬状況の把握、必要に応じたフォローアップなど、手厚いサポートが保険適用、数十円で受けられるとなったら、納得して同意を得られるのではないでしょうか?
かかりつけの同意を取るためのコツ
では実際に、患者に気持ちよくかかりつけの同意を取ってもらうためにはどうすればよいか見ていきましょう。
一度断られても諦めない
かかりつけを一度断られたからと言って諦めていませんか?断られても、2回3回と案内を続けていくことと、受付や服薬指導時、会計時など様々なタイミングで、かかりつけ薬剤師の案内をしましょう。マーケティングの世界でよく用いられる「ザイオンス効果」では、特定の人物や物事に繰り返し接触することで、好感度や興味が高まっていくということが示されています。口頭だけではなく、薬局の壁やカウンターへのポスター掲示はもちろん、チラシなども用意して、家に帰っても思い出せるような仕組みづくりがあるとなお良いでしょう。
メリットをエピソードをもって語る
かかりつけが必要ないと思っている相手に対し、ポスターに書いてあるようなありきたりなメリットを言っても心に響きません。実際にかかりつけの同意をして良かった、という自らの体験で共感をしてもらいましょう。例えば、自分の家族や知り合いでかかりつけ薬剤師がいることで助かったといったエピソードがあれば、それを聞いてトークに繋げます。もし周りでエピソードをもっている方がいない場合は、同僚のエピソードでも良いでしょう。ネットで調べればわかる情報ではなく、生の声を聞くことで、相手はメリットを自分ごととして捉えるようになります。
かかりつけのメリットではなく患者の体験を売る
かかりつけのメリットを語ったところで、それは提供側のエゴにすぎません。同意を得るために必要なのは、かかりつけの同意をしたら自分はどうなるのか?をイメージさせることです。例えば、かかりつけ薬剤師は他医療機関の薬も把握しますよ、と説明したところで、それが自分にとってどのようなメリットがあるのか、相手が理解していなければ、同意を得ることはできません。例えば、複数薬を飲んでいる患者には「飲み忘れたり、薬が切れるタイミングを忘れてしまったり、管理が複雑ではありませんか?かかりつけ薬剤師がサポートすれば、薬の管理が楽になりますよ」ということで、どんなメリットが自分に生まれるかイメージさせることができます。かかりつけ薬剤師を持つことでどんな体験ができるのか?を相手の立場になって考えながら、話すことを意識してみましょう。
まとめ
これまではかかりつけの要件を満たすだけで届け出が出せましたが、令和6年の調剤報酬改定ではいよいよ実績が求められるようになり、同意を取るためにどうアプローチをすればよいか頭を悩ませている方も多いと思われます。まずは、自分が患者になったらどのような点でメリットを感じるのかを考え、自分なりのエピソードやトークでアタックしていくのが同意のコツです。
こちらの記事を参考に、自信をもって患者にかかりつけ薬剤師を進めていきましょう。
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