かかりつけ薬剤師になるには
目次
- □かかりつけ薬剤師になるには一定の経験が求められる
- □そもそもかかりつけ薬剤師とはどのようなものか
- □かかりつけ薬剤師に必要な認定薬剤師になるには
- □かかりつけ薬剤師が必要とされる背景
かかりつけ薬剤師になるには一定の経験が求められる
かかりつけ薬剤師はどの薬剤師でもなれるものではありません。新たに試験などに合格する必要はないものの、厚生労働省の定める条件をクリアしている必要があります。

まずは薬局勤務の経験についてです。薬局で3年以上の実務経験を持っていることが大前提です。その上で同じ薬局に週32時間以上勤務している、当該薬局に12ヶ月以上在籍していることが条件となります。
次に認定薬剤師という、薬剤師の認定資格を取得する必要があります。認定薬剤師は、薬剤師認定制度認証機構(CPC)が認定している認定薬剤師認証研修機関(プロバイダー)が「自己研鑽により資質向上努力を継続している薬剤師」として認めた薬剤師に対し、認定を授与しています。
最後に医療にかかわる地域活動の取り組みに参加している必要があります。地域活動の取り組みというのは、わかりにくいかもしれませんが、よく地域で開催されている「お薬の相談会」などの医療関係のイベントに参加経験があれば、この条件をクリアすることができます。
そもそもかかりつけ薬剤師とはどのようなもの?
かかりつけ薬剤師とは平成28年4月からスタートした新制度に基づき、新規設置された薬剤師の職能機能です。患者さまが専任の薬剤師を指定し、薬の一元管理・継続管理をするシステムです。患者さまかかりつけ医の薬剤師バージョンと思ってもらえればわかりやすいでしょう。
かかりつけ薬剤師は、患者さまが服用している全ての薬の管理をします。例えば、複数の病院に通っていて複数の薬を服用している場合などは、効果の面でダブっているものはないか、飲み合わせで問題のあるものはないかなどを確認します。また医者の処方する医薬品のほかにも、ドラッグストアなどで購入できる市販の薬や健康食品、サプリメントの情報なども管理します。 さらに、開局時間外でも電話対応などで患者さまの健康相談・薬についての相談を受けつけます。患者さまの症状が悪化した場合には、医療機関へ連絡を行います。
今後かかりつけ薬剤師が増えていくことが予想されますが、かかりつけ業務は点数が高く、収入アップが見込めるためという理由だけではありません。かかりつけ薬剤師になることで、薬を通じて人を支援し、地域を支援することができます。広域的に人々をサポートすることができるかかりつけ薬剤師は、患者さまから「気軽に相談してみよう」と思ってもらえる存在となり、より包括的に地域貢献することができます。
かかりつけ薬剤師に必要な認定薬剤師になるには?
冒頭に紹介したかかりつけ薬剤師になるための要件の中の一つに、認定薬剤師になることという条件がありました。認定薬剤師資格は、一定の期間、集合研修や自己研修により、定められた単位を取得することで、「自己研鑽により資質向上努力を継続している薬剤師」として認められると資格を取得することができます。認定薬剤師になることで、薬剤師として専門性が高く、かつ最新の知識・情報を勉強し続けていることの証明となります。
認定薬剤師になるためには、一定期間専門の研修を受ける必要があります。研修を受けるとその内容に応じて一定の単位が取得できます。この単位を4年以内で40単位以上取得しなければなりません。認定薬剤師になるために必要な単位ですが、4年いっぱいかけて取得する必要はありません。過去に認定を受けた薬剤師のなかには、1年以内で単位取得をしたケースもります。ただし、もし2年以上かけて単位を取得する場合には、毎年少なくても5単位以上取得する必要がありますので注意しましょう。
薬剤師免許はいったん取得できれば、ずっと一生涯にわたって使える資格です。しかし認定薬剤師の資格は更新制となっているので、更新手続きをしなければ失効してしまいます。認定薬剤師の資格は3年ごとの更新となっているので、忘れず手続きをしましょう。
またこの更新をする3年間に、新規申請同様に単位を取得することが求められます。3年間に30単位以上取得する必要があり、年間5単位以上取得しなければならないのも新規申請時の条件と同じです。
認定薬剤師になるためには、上記で紹介した単位を取得したあと認定薬剤師認証研修機関(プロバイダー)に申請を行う必要があります。所定の申請書に必要事項を記入し、研修内容をメモし、単位取得した際にもらえるシールを貼り付けるための研修手帳を添付して提出します。この際、認定手数料を振り込みで支払う必要があるので、忘れずに手続きを進めましょう。 手続きに不備がなければ、認定薬剤師証が届き、晴れて認定薬剤師となれ、かかりつけ薬剤師として活躍できる要件を一つ満たせます。
かかりつけ薬剤師が必要とされる背景
高齢社会が進むに伴って、病院の利用者数が増えています。それに伴い医療費がどんどん膨らんでいて、これが国の財政を圧迫しているという話は以前から指摘されていたことです。医療費を削減して、負担を少しでも軽減することが国の喫緊の課題の一つになっています。
医療費の削減をするにあたって、薬が注目されています。患者さまの中には、処方された薬を飲むことなくそのままの状態で残しているというケースがあります。さらに、複数の病院に通院していて、似たような効果のある薬をそれぞれの病院で処方されているケースもあります。 医薬品を出すにも国のお金が使われています。かかりつけ薬剤師を設置することで、患者さまに対して専任の薬剤師が薬の管理をします。するとその薬剤師は患者さまに対して、いままでどのような薬を処方されていたかを把握できます。重複している薬はないか、患者様が前に処方した薬を飲み終えていないのであれば、次の処方量を減らすなどの対策ができます。 こうすることで薬の飲み残しのリスクが少なくなって、その分医療費の削減ができるのではないかと期待されているのです。
2025年までに日本全国すべての薬局を「かかりつけ薬局」に再編することを目標に、制度改革が進められています。つまりこれから調剤薬局で勤務するのであれば、かかりつけ薬剤師を目指すことが求めれることも増えてくるでしょう。
薬剤師がかかりつけ薬剤師になるには、自分のスキルアップ・レベルアップが見込めるというメリットも期待できます。何度も紹介したようにかかりつけ薬剤師になれば、自分が担当する患者さまの処方箋などを一元管理する立場になります。患者さまによっては、複数疾患を抱えていて、いろいろな薬を処方することもあるかもしれません。すると医薬品に関する幅広い知識を身に着けられる可能性もあります。
またこれまでの薬剤師というと、医者の書く処方箋の通りに調剤するのが業務というところがありました。しかし患者さまの専属になることで、薬の飲み合わせなどを見て医者に対して処方の見直しを求める頻度も増えてくるでしょう。医者と同等の立場で仕事ができる、それだけ責任感のあるやりがいのある業務を担当できるというメリットも期待できます