かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書とは
まとめ
- □「患者のための薬局ビジョン」策定の経緯
- □KPI 設定の経緯
- □薬局機能情報提供制度に係る省令改正は平成31 年1月施行
- □調査の目的
- □調査対象・調査方法
- □回収状況
1.「患者のための薬局ビジョン」策定の経緯
我が国では、国民の医療の質的向上を図ることを目的として医師と薬剤師がそれぞれの専門分野で業務を分担する医薬分業が推進されて以降、薬局における処方箋受取率は増加し続けている。その一方で、医薬分業における薬局の役割が十分に発揮されていないとの指摘もなされている。
例えば、規制改革会議で医薬分業が取り上げられた際の検討では、「医療機関の周りにいわゆる門前薬局が乱立し、患者の服薬情報の一元的な把握などの機能が必ずしも発揮できていないなど、患者本位の医薬分業になっていない」、「医薬分業を推進するため、患者の負担が大きくなっている一方で、負担の増加に見合うサービスの向上や分業の効果を実感できていない」などが指摘されている。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、平成27 年10 月に「患者のための薬局ビジョン」を公表し、患者本位の医薬分業の実現に向けて、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにするとともに、団塊の世代が後期高齢者(75 歳以上)になる2025 年、さらに10 年後の2035 年に向けて、中長期的視野に立って、現在の薬局をかかりつけ薬剤師・薬局に再編する道筋を提示した。
2.KPI 設定の経緯
<KPI 設定の背景>
経済・財政再生アクション・プログラム2016 では、医薬分業の質を評価するため、KPI(KeyPerformance Indicator)を設定し、その進捗管理を行うことを求めている。具体的には、「「患者のための薬局ビジョン」に基づき設定する医薬分業の質を評価できる指標の進捗状況」として、以下に示す6項目が設定された。

このうち、「「患者のための薬局ビジョン」において示すかかりつけ薬剤師としての役割を発揮できる薬剤師を配置している薬局数」については、平成28 年度の時点ではまだ具体的な指標は定まっていない状況であった。
<「患者のための薬局ビジョン」実現のためのアクションプラン検討委員会報告書の策定>
「患者のための薬局ビジョン」の実現のためには、薬剤師・薬局が地域の患者のかかりつけになるため、住民と顔の見える関係を築きながら、地域の医療需要・供給の状況、住民の特性、地域資源等の実情を踏まえて、地域に必要な薬剤師・薬局として取り組むべき課題を把握し、その解決策を検討し、解決に向けて行動しなければならない。
「患者のための薬局ビジョン」実現のためのアクションプラン検討委員会報告書は、各薬局等における取組の基本的な方針となるよう、薬剤師・薬局が抱える現状の課題とその解決のための方策、参考となる事例等をとりまとめたものである。また、KPI について、「患者のための薬局ビジョン」において示すかかりつけ薬剤師としての役割を発揮できる薬剤師を配置している薬局数」を評価しうる指標の検討が行われ、今後、厚生労働省が全国的に把握すべき指標としては、以下の4つの分類ごとに設定すべきと結論付けられた。

<KPI の設定と進捗状況の把握>
厚生労働省は、「患者のための薬局ビジョン」実現のためのアクションプラン検討委員会報告書で提案された内容を踏まえ、平成29 年度に、「「患者のための薬局ビジョン」において示すかかりつけ薬剤師としての役割を発揮できる薬剤師を配置している薬局数」として、以下の4つの指標を決定した。

また、厚生労働省は、患者や地域住民が薬局の選択を適切に行うために必要な情報を都道府県が公表する薬局機能情報提供制度について、薬局開設者が都道府県知事に報告する事項として上記KPI を含む項目を追加する省令改正を平成29 年10 月に公布した。その際、全国的にKPI の進捗状況を把握できるようにするため、厚生労働省から都道府県に対し、各都道府県が把握したKPI 等の情報を定期的に厚生労働省に報告するよう依頼した。薬局機能情報提供制度の多くは、都道府県ごとに、薬局開設者からの報告やその報告内容の情報提供(都道府県のホームページ等)がシステム化されているのが現状である。薬局機能情報提供制度に係る省令改正に対応するシステム改修の期間を考慮し、改正省令は平成31 年1月施行となっており、その後KPI の全国的な把握が開始される予定である。
調査の概要について
1.調査の目的
1.調査の目的
厚生労働省では、患者本位の医薬分業の実現に向けて、平成27 年10 月に「患者のための薬局ビジョン」を策定し、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24 時間対応・在宅対応、医療機関等との連携など、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにした。また今年度には、かかりつけ薬剤師・薬局の推進に関して、進捗状況を把握するためのKPI(例;電子版お薬手帳への対応の可否 等)を設定したところである。しかしながら、各都道府県において薬局機能情報提供制度にKPI が報告されるのは平成31年1月以降であるため、かかりつけ薬剤師・薬局の推進に関する指標を中心に、薬剤師・薬局の現状について把握・分析を行うことなどを目的とし、薬局及び患者に対するアンケート調査を実施した。
2.調査対象・調査方法
薬局に対するアンケート調査
- □調査対象 抽出後の都道府県ごとの薬局数の構成割合が母集団(全国値)とできるだけ同様になるよう、都道府県ごとに無作為抽出した5,000 薬局。
- □調査方法 自記式の紙調査票を郵送で配布・回収した。調査時期は平成29 年11 月22 日〜平成30 年2 月9 日。
- □回収状況 回収状況は以下の通りである。

参考文献:厚生労働省 平成30年3月「かかりつけ薬剤師・薬局機能調査・検討事業」かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書
