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これから求められる未来薬剤師の姿

まとめ

  • □薬局業務のICT化により、現行業務のうちの多くは薬剤師の専業性が必ずしも必要ではなくなる。
  • □薬剤師業務を効率化するための積極的なICT化の導入を考えると、一定規模の積極的な投資が必要。
  • □調剤薬局の中心プレイヤーが薬剤師であるのは確かだが、ICTソリューションの発達は未来薬剤師への進化を左右する。

薬剤師の役割の変革

薬局業務のICT化により、現行業務のうちの多くは薬剤師の専業性が必ずしも必要ではなくなると考えられます。 たとえば、服薬管理は最先端技術による精度の高いモニタリングが可能になり、適切に服薬しているかは誰でも把握できるようになるでしょう。 加えて、オンライン服薬指導が実用化されれば、薬の受け取りだけを目的として患者が薬局に足を運ぶことはなくなると考えられます。 一方で、こうしたICT化は薬剤師に新たな活躍の機会を提供することになるとも考えられます。

 これから求められる未来薬剤師の姿

たとえば、服薬支援ロボは、実際に患者の自宅に行くことなく服薬管理を実現させ、注意深い管理指導が必要な患者を効率よく見つけることができます。 また、オンライン服薬指導についても、若年齢や軽症の患者に対する時間を節約し、より複雑な背景の患者へ時間をかけられるようになります。つまり、薬剤師のあり方を変革する点で、ICT化は大きな武器になると考えられます。

地域包括ケアシステムの中での 薬剤師のあり方 -薬学コンサルタント-

1 つ目のあり方として、治療の観点からの医療貢献です。

地域包括ケアシステムの構築に向けて、チーム医療の中で薬剤師に求められる役割は多い。 特に、慢性疾患、認知症、がんといった、地域医療の主対象である高齢者が罹患する疾患の、長期的治療に対する貢献へのニーズは高いと思われます。 現在の薬局業務では、処方せんを調剤することが主業務であり、患者からの相談対応、お薬カレンダーの提供は任意の取り組みとなっています。 しかし、今後は、現在の調剤歴・薬歴に加えて、バイタルデータ、服薬管理データなどの患者情報を集約し、薬剤観点からの包括的かつ長期的な患者サポートを提供することが求められます。 その上で、薬剤師は服薬ができていない原因の特定や、代替策(投薬回数の低い医薬品への変更、副作用によるものと考えられれば医療機関受診の推薦)の提案を積極的に行い、長期にわたって服薬治療の質の向上に寄与できるのではないでしょうか。 そのためには2 つの課題があります。

1 つは薬剤師の負担増加への対策で、現在でも調剤薬局における薬剤師数は不足しており、薬剤師の業務負担は大きく、既存業務に新たな業務を追加してしまうこと。 もう 1 つは患者の負担で、診察を受け、調剤を待った上、その後さらに薬剤師とのコミュニケーションの時間を持つのは難しいということです。 そこでICT技術を活用し、薬剤師と患者の交流を根本的に見直すことが必要となります。 薬剤師の既存の業務を可能な限りICT化することで、負担を小さくできます。

たとえば、薬歴管理や在庫管理はICTソリューションを利用して負担を小さくすれば、かかりつけ薬剤師は担当患者に待ち時間を与えることなく患者相談に対応できる。 また、バイタルサインや服薬記録を電子処方せんと同じサーバーに記録し、処方せんの受付とともにデータ確認の上、処方せんに問題がなければ通常の服薬指導を行い、もし懸念点があれば時間をかけて指導するということも考えられます。 あるいは時間のない患者に対しては、チャットやビデオ電話機能を活用した追加の服薬指導も有用です。 このように、患者視座の状況に合わせた服薬指導を重ねることで、患者とのコミュニケーションの増加、信頼関係の構築が期待されます。

予防医療の中での薬剤師のあり方 -健康推進コンサルタント-

あり方の 2 つ目は、予防医療の観点からの医療貢献です。

近年では、病気によるQOLや生産性の低下、医療コストの増加が問題となっており、高齢者だけでなく中高年者や若年者に対し、サプリメントや食事、運動も含め、長期的な健康維持への貢献が期待されます。 現在、一部の薬局では管理栄養士による栄養指導を実施しています。 最近では管理栄養士を配属し、栄養指導を行っている調剤薬局もあり、クリニックと委託契約を結び、管理栄養士を派遣する形で、医師の指示書に基づいた栄養指導を実施しています。 栄養指導の内容を医師だけでなく薬剤師と共有することで服薬指導に反映させています。 こういったことは医療の質の向上につなげられることもあり、多くの薬局で需要があると考えられます。

実現に向けた重要な鍵は、薬局がいかに患者にサービスを認識させ、薬剤師に気軽に相談してもらう環境を作れるかということです。 多くの人は処方せんなしで、薬剤師に対して、医薬品以外のサプリメント、食事、運動といった内容は気軽には相談しづらい。 そこで、ICT技術を活用した、より気軽に相談できる環境の提供も必要ではないでしょうか。 たとえば、オンライン相談機能を作り、専門家によるアドバイスを提供することが考えられます。 さらには、そういったサービスを各社から出されているウエアラブルデバイスのデータを活用しながら、未病と治療をつなげる調剤の強力なプラットフォームが生まれるのではないかと考えられます。

特定疾病領域薬局になるための薬剤師のあり方 -領域特化型の専門家として-

薬局や薬剤師のあり方としてもう 1 つ挙げられるのは、特定の顧客層や疾患領域における薬局機能の特化です。

今後、薬局に求められるのは薬を渡すことではなく、疾患治療もしくは未病管理を目的として集約された情報から、患者にパーソナライズされた提案をしていくことです。 そのため、提供するサービスを顧客層や疾患領域に特化させることにより、専門的な疾患知識に対応していくことも有用と考えらます。 たとえば、糖尿病などの慢性疾患の管理においては、血糖値などのバイタルデータを継続的に管理して症状を悪化させないことが求められます。 認知症患者に対しては、服薬をいかに計画的に継続できるかかが最も重要であるし、がん患者に対しては、抗がん剤で免疫力が低下した身体への総合的な薬剤管理や鎮痛剤の適正使用が求められます。 このように疾患によって求められる価値が異なるため、それに応じて薬局が専門特化することも、患者ニーズに応えた変化でしょう。

かかりつけ薬剤師とプロトコルに基づく薬物治療管理(PBPM)

PBPMは、医師と薬剤師が事前に合意した標準手順(プロトコル)に基づいて、薬剤師が実施する薬物治療管理のことです。 2010年の厚生労働省の通知以来、PBPMを推進するためのアプローチとして、各地の病院および薬局の間で院外処方せんにおける疑義照会簡素化への取り組みが行われてきました。

たとえば神戸大学では、残薬による処方量変更を含めた14項目について、医師に対する疑義照会が不要であるとしています。 東邦大学大森病院では、一包化については疑義照会不要としているが、成分名が同一の銘柄変更、貼付剤・軟膏の包装・規格変更など 7 項目の疑義照会については院内薬剤師にて代行回答し、残薬確認に関連する疑義については医師が回答しています。 このように、さまざまな取り組みがなされる一方、病院によって判断基準が異なっているという現状もあります。

全国に展開する調剤チェーンやドラッグストアにとっては、対応病院によって業務プロセスが異なることから全国共通のインフラを導入することができず、結果としてそれが患者へのサービスの質の低下につながる恐れがあります。 医師会や薬剤師会といった関連団体においては、PBPMの全国標準化を進め、医療サービスの向上につなげることが求められるでしょう。

薬局における取り組み

薬局の取り組みとしては、まず薬剤師業務を効率化するための積極的なICT化の導入を考えると、一定規模の積極的な投資が必要でしょう。 近年、M&Aなどによる薬局の統合が進んでいるが、他業界と比較して資本の集中化が進んでいるとはいえません。 大企業のチェーンだけでなく、中小調剤薬局同士のアライアンスなど、積極的なネットワーク化を進めるべきでしょう。 その上で、治療と予防の観点から顧客へのサービスを根本的に創造していく必要があります。

同一店舗の中で両サービスを提供することも考えられるし、チェーンなどでは治療業務に特化した重点拠点、予防医療を提供する周辺拠点という実店舗を構えつつ、アプリなどICTプラットフォームでネットワーク化することで、患者に対してシームレスなサービスを提供することも考えられます。 法規制の変化やICT技術の進展の中で、薬剤師は変革を求められる渦中にいます。 調剤産業の中心プレイヤーとして、これから薬剤師がどうあるべきか、発信し実行していくことが求められます。

参考文献: 厚生労働省 「平成26年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査 野村総研 知的資産創造/2017年10月

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